日本水処理生物学会誌
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異なる水理学的滞留時間での水素酸化脱窒反応における脱窒性能に及ぼす重炭酸塩の影響
Suphatchai Rujakom篠田 健太Tippawan Singhopon中野 麻衣亀井 樹風間 ふたば
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2020 年 56 巻 3 号 p. 33-45

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抄録

 水素酸化脱窒(HD)反応は亜硝酸還元に重炭酸イオンを炭素源として利用する。本研究は水理学的滞留時間(HRT)最短化に資するため、重炭酸イオン濃度の調整によって、HD反応の亜硝酸還元促進による脱窒性能の強化を検討した。重炭酸イオンを化学量論的に必要量以上添加した場合でも、HRTが短いと、亜硝酸の除去能は低いことが示唆された。添加した重炭酸イオン量により細菌群集は変化し、必要量を添加した場合ではRhodocyclaceae, Alcaligenaceae, Xanthomonadaceae科細菌が、十分量供給した条件ではThauera spp.が、それぞれ優占細菌として存在した。また、後者の条件では、亜硝酸還元遺伝子nirSの存在量が最も多く、さらにThauera spp.の分布率との間に強い相関関係があることがわかった。以上から、本研究より、HD反応においては、nirS遺伝子を持つ細菌の増殖誘導に重炭酸塩が重要な役割を持っていることが明らかになった。

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© 2020 日本水処理生物学会
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