日本造血・免疫細胞療法学会雑誌
Online ISSN : 2436-455X
総説
高齢者移植のリスクとベネフィットを考える~70歳代の移植の可能性~
小林 寿美子
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2022 年 11 巻 1 号 p. 22-35

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抄録

 過去15年を振り返ると60歳代の骨髄系腫瘍に対する同種造血細胞移植が拡大の一途を辿っている。特に65-69歳の移植数が急激に増加している。さらに高齢者社会を反映して国内外ともに70歳代の移植例も徐々に増加しつつある。海外の報告同様にJSTCTのJDCHCTから得られたTRUMPデータ解析においても60歳代のAMLに対する同種移植成績は年齢ではなく寛解の有無が重要因子であるとされる。MDSにおいても60-64歳群,65-69歳群,それ以上において全生存率(OS)に差がなかったという報告が多い。TRUMPデータから得られた2003-2018年の70歳代の骨髄系腫瘍に対する同種移植数はAML 298例,MDS 94例であり,年齢中央値はいずれも72歳であった。高齢になるほど完治だけでなくQOLも重要であり,移植により生命予後の改善が期待できるかどうかの因子を抽出することで70歳代の移植はさらに拡大すると思われる。

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© 2022 一般社団法人日本造血・免疫細胞療法学会
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