Journal of UOEH
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中国人肺癌患者の末梢神経障害に関する臨床的および病理学的研究:腓腹神経の形態計測的評価
Shi-he LIN大西 晃生Xin-mei JIANG山本 辰紀
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1993 年 15 巻 1 号 p. 13-20

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抄録

感覚障害を呈する6名の中国人肺癌患者において, その臨床的および腓腹神経の組織病理学的特徴を明らかにすることを目的とした. 特に腓腹神経の形態計測的所見に注目した. 患者はすべて男性で, 入院時の年齢は39歳から67歳であった. 初発症状として感覚異常がすべての患者に認められた. 四肢末端部の異常感覚の出現から癌の診断までの期間は2ないし72ヵ月であった. 異常感覚は緩徐進行性で, その程度は軽度ないし中等度であった. 明らかな感覚低下の訴えは認められなかった. 筋伸張反射の低下と振動覚低下がそれぞれ4名で認められた. 腓腹神経の形態計測的検討により, 1例で大径有髄線維密度の, 他の1例で無髄線維密度の明らかな低値が認められた. 一方, 小径有髄線維密度は患者群で対照群より明らかに高値を示した. それ故, 形態計測的所見のうちで, 有髄線維の小径化すなわち軸索萎縮が最も顕著な所見であると判断された. なお, いずれの腓腹神経にも, 明らかな髄球, 脱髄軸索, onion-bulb形成および再生有髄線維は認められなかった. それ故, 腓腹神経レベルでは大径有髄線維の軸索萎縮が生じていると結論した. これらの症例は脊髄後根神経節の神経細胞の変性を主病変とするsubacute carcinomatous sensory neuropathyとは明らかに異なる. これらの末梢神経障害の原因の一部として少なくとも癌の遠隔効果が推定される.

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© 1993 産業医科大学
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