2013 年 22 巻 8 号 p. 590-596
従来の放射線化学療法をもってしても予後不良である神経膠芽腫に対する新たな治療として, 分子標的薬が注目されている. 腫瘍発生・進展の分子生物学的メカニズムが明らかになるにつれ, さまざまな薬剤が開発され臨床治験が行われてきた. しかし腫瘍細胞内シグナル伝達異常の多様性などのため, 高い奏効率を示し認可に至った分子標的薬はいまだない. 神経膠芽腫という組織学的診断のみでなく, ターゲットシークエンスなどによる分子病理学的診断が実臨床に導入されつつあり, 個々の腫瘍の遺伝子異常に即した分子標的薬の選択, すなわちテーラーメイドな癌治療が有望視されている. 本稿では, アメリカにおける神経膠芽腫の治療戦略の現状を概説する.