脳神経外科ジャーナル
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グリオーマにおける遺伝子解析と基礎研究の動向(<特集>グリオーマ治療の現状と展望)
中村 英夫倉津 純一
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2012 年 21 巻 3 号 p. 216-223

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抄録

グリオーマにおける腫瘍特異的な遺伝子解析においては,DNAマイクロアレイやDNAチップ,その他の解析機器を使った網羅的なアプローチが主体になってきており,2008年にはglioblastoma(GBM)を対象にしたThe Cancer Genome Atlas (TCGA)が『Nature』に報告された.ゲノム異常だけでなく,発現している遺伝子の解析もTCGAのサンプルを用いて行われ,臨床的な治療反応性との関連性が示唆された.今回,代表的なグリオーマの遺伝子,染色体異常として1p/19q LOH, IDH1/2 mutation, BRAFの異常などが選択された.1p/19q LOHは,oligodendroglioma系の腫瘍で頻度が高く,この染色体異常が存在するとgenotoxicな治療に対する反応性がよいと言われている.IDH1は,grade 2/3のグリオーマにおいて60〜80%の割合で遺伝子変異が見つかっており,現在,この遺伝子変異は予後良好因子と考えられている.BRAFはpilocytic astrocytomaにて高頻度に見つかっている遺伝子異常であるが,MAPキナーゼの活性化の原因となっている.これらについて概説する.

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© 2012 日本脳神経外科コングレス
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