日本顎口腔機能学会雑誌
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原著論文
咽頭への溶液刺激が嚥下時喉頭運動と舌骨上筋群筋活動に与える影響
本間 正寿林 豊彦井上 誠道見 登
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2015 年 22 巻 1 号 p. 6-13

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抄録

 これまで嚥下誘発のメカニズムや嚥下運動関連筋活動のパターンを解明するために,さまざまな生理学的研究が行われてきた.そこでは,舌骨上筋・下筋群などの嚥下関連筋の筋電図,喉頭や舌などの運動などが評価対象となっているが,これらを同時に記録した例は少なく,さらに嚥下誘発条件の違いがもたらす効果についてはいまだに明らかにされていない.そこで本研究では,喉頭運動と舌骨上筋群筋電図の同時測定により,咽頭への溶液刺激が嚥下動態に与える影響について解析することを目的とした.健常成人10名を対象に,蒸留水もしくは0.3 M NaCl溶液による咽頭刺激時の随意性嚥下運動および反射性嚥下運動を記録し,各溶液間における随意性嚥下の比較および随意性嚥下と反射性嚥下の比較を行った.随意性嚥下時の溶液間の比較では,喉頭運動の挙上第1相のみに有意な変化がみられた.一方,随意性嚥下と反射性嚥下の比較では,反射性嚥下に比べて随意性嚥下で挙上第1相が延長し,第2相が短縮していた.第1相の延長は,嚥下反射の準備として舌骨を引き上げることを示し,第2相の短縮は,その準備により随意性運動から反射性運動への移行が円滑になっていること示すと考えられる.

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© 2015 日本顎口腔機能学会
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