要約:石巻医療圏において,東日本大震災後の1 カ月間に12 例の肺血栓塞栓症例が発生し,平成23 年7 月までに32 カ所の避難所で701 名に行った下肢静脈エコー検査で,190 名に深部静脈血栓症(DVT)を認めた.DVT 陽性率は震災直後の3 月を最高に徐々に低下傾向であったが,避難所の集約が行われた直後の5 月に一時的に上昇した.津波で浸水した避難所は非浸水避難所に比較して有意にDVT 陽性率が高かったことから(各34.2%,19.1%,P<0.001),避難所環境がDVT 発症に影響したことが推測された.8月以降,仮設住宅団地17 カ所で360 名にエコー検査を行い,32 名にDVT を認めた.非被災地でのDVT 陽性率に比較すると明らかに高く,仮設住宅入居後の住民の活動性の低下が影響していると思われた.以上より,環境の悪い浸水地域からの早期の二次避難と仮設住宅での活動性保持などがDVT 予防に重要と思われた.