1987 年 78 巻 8 号 p. 1345-1353
遠隔転移を有しないT2~T4の浸潤性膀胱癌患者20例に対してシスプラチンと放射線照射の併用療法を行った. 10例は併用療法後に膀胱全摘除術を施行したが, 他の10例は種々の理由から膀胱全摘除術を施行できず膀胱保存で経過をみた. 膀胱全摘の術前に併用療法を施行した群では40Gyの放射線照射と20mg/m2のシスプラチン5日間連続投与の併用を行った. 膀胱保存群では60Gyの放射線照射と20mg/m2のシスプラチン5日間連続投与の併用を行った. 膀胱全摘群での摘除膀胱の病理学的所見では70%に down-staging (p<T) を, 40%に腫瘍の消失(P0)をみとめ, すぐれた近接効果がみとめられた. 膀胱保存群については治療成績判定には追跡期間が不充分ではあるが, 3カ月から2年2カ月の追跡期間で50%の症例で膀胱内の再発をみとめていない. 副作用は許容範囲内であると判断された. 治療後に遠隔転移の発生を35%の症例にみとめ, 本併用療法は遠隔転移の発生防止には効果がないと考えられた.