日本泌尿器科學會雑誌
Online ISSN : 1884-7110
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性分化異常におけるヒト外陰部皮膚 androgen receptor の検討
武田 克治大橋 洋三東條 俊司入江 伸古川 雅人大橋 輝久大森 弘之
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1987 年 78 巻 3 号 p. 477-483

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抄録

ヒト外陰部の皮膚組織を超遠沈法により, cytosol および crude nuclear extract に分離し, その androgen receptor (AR) を methyltrienolone (R 1881) を ligand とした AR assay を用いて測定し, 次の結果を得た.
1. 外陰部皮膚組織の cytosol においてはR 1881 receptor に対する progesterone の競合は軽度であり, triamcinolone acetonide 添加による影響はほとんど認められなかった.
2. 正常成人男子11例のARの解離定数 (Kd) は cytosol で0.42±0.17nM, nuclear extractで0. 26±0.06nMであった. また, 外性器発育不全を呈する症例のそれは cytosol で0.54±0.21nM (n=9), nuclear extract で0.31±0.18nM (n=7) と正常成人男子と有意の差は認められなかった.
3. 正常成人男子11例のARの結合部位数 (Bmax) は cytosol で5.91±1.84fmol/mg-protein, nuclear extract で18.0±5.18fmol/mg-protein であった. 一方, 外性器発育不全を呈する症例では cytosol ではn. d. から高値までの変動が認められたが, nuclear extract では全例低値であった. 特に, 精巣性女性化症完全型の1例では cytosol, nuclear extract ともn. d. であった.
以上より, 本測定法は外陰部皮膚組織におけるAR測定の簡便, 迅速な方法であり, 性分化異常症の診断に有用であることが推察された.

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