日本泌尿器科學會雑誌
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Print ISSN : 0021-5287
モノクローナル抗体を用いた膀胱腫瘍の研究
沼田 功星 宣次高橋 薫吉川 和行栃木 達夫折笠 精一益子 高橋本 嘉幸今井 克忠
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1986 年 77 巻 7 号 p. 1151-1158

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抄録

〔目的と方法〕ヒト膀胱腫瘍由来の培養細胞KU-1, T24, 5637とヒト組織球由来の培養細胞U-937に対するモノクローナル抗体を用いて, 膀胱腫瘍組織に対する反応性と臨床像を検討した. 86例の膀胱腫瘍患者から得た組織を用い, モノクローナル抗体に対する反応性は, アビジン・ビオチン複合体を使用して, 酵素抗体法にて検討した.〔結果〕T24, 5637に対する抗体は, 移行上皮腫瘍とほとんど反応しなかったので, 以後の検討から除いた. KU-1に対する抗体, HBA4, HBG9, HBH8とヒト組織球由来の培養細胞U-937に対するLeu-M1は, それぞれ17%, 27%, 64%, 50%の症例に陽性反応を認めた. HBH8は最も陽性率が高かったが, 正常膀胱上皮とも約30%の例と反応した. 他の抗体は腫瘍の部位のみに特異性を認めた. 次に抗体の反応性と腫瘍の Grade, Stage との関係を検討したが, 有意な関連性を認めなかった. 腫瘍の染色型式には, 腫瘍層全体, 腫瘍表層部のみ, 腫瘍基底部付近のみ染色される3種類のパターンがみられた. 腫瘍基底部のみが染色される例は low grade, low stage の乳頭状腫瘍のみであった. これらの抗原性が腫瘍再発を繰り返す間に変化するか否かを, 再発を繰り返す5症例の表在性腫瘍で検討した. 経過中抗原性が変化することは少なかった.〔結論〕今回検討した4種類のモノクローナル抗体いずれかに対して, 移行上皮腫瘍の約80%が抗原性を示し, 膀胱腫瘍の早期診断, 治療に応用できるものと考えられた.

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