日本泌尿器科學會雑誌
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腎血管鋳型法による腎手術の検討 (2)
腎静脈鋳型標本よりみた術式別術後腎機能に関する研究
沖 守
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1986 年 77 巻 11 号 p. 1754-1766

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抄録

各種腎手術を家兎腎に施行し, 生化学的データ, 腎静脈鋳型標本, 及び経時的病理組織学的検索により術式別優劣を中心とした検討を行った. 家兎の右腎を摘出後左腎に下記の手術を施行した. 1) 対照群 (右腎摘除術のみ), 2) 腎切半術, 3) 多発性腎切開術, 4) 楔状型腎部分切除術, 5) 横断型腎部分切除術, 6) 電気水圧衝撃波による腎結石破砕術.
以上6群の手術を施行後, 6週間, 血清LDH活性・LDHアイソエンザイムを測定した後手術腎を摘出し, 腎静脈鋳型標本を作製した. さらに, 右腎摘出後8週経過した代償性肥大腎に腎切半術, 横断型腎部分切除術, 電気水圧衝撃波による腎結石破砕術を施行し術後の修復過程を病理組織学的に観察した. 腎静脈鋳型標本では血管の再生が認められ, 手術部に小血管の新生が観察された. この新生小血管は腎部分切除術において著明な拡張, 蛇行を呈した. 病理組織学的観察では術後1週目で全ての群に線維化が認められた. 線維化した組織内の手細血管は横断型腎部分切除術において最も拡張していた. 組織侵襲も横断型腎部分切除術で高度であった. 血清LDH活性, LDHアイソエンザイムは各手術群において有意差を認めず, 家兎においては術後の腎機能の指標とはなり得ないと判断された.
静脈鋳型標本, 病理組織においてみられた血管の蛇行や拡張は, 実質縫合における張力によるところが大きいと予想された. 腎切半術, 電気水圧衝撃波による腎結石破砕術ではこれらの所見が殆ど見られず, 腎血管への影響が少ないと予想された. しかし, 電気水圧衝撃波による腎結石破砕術施行後6週の病理組織において, 電極刺入部とは異なった部位に二次的循環障害を疑わせる所見がみられたことは注目すべきである.

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