日本泌尿器科學會雑誌
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膀胱癌におけるアリルスルファターゼAの研究
三橋 公美
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1984 年 75 巻 9 号 p. 1372-1379

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抄録

膀胱癌患者を主として, 110例の尿中AS-A活性測定と, 正常膀胱粘膜と膀胱癌組織28例のAS-A活性および等電点分画を行った. 1) 午前中の一部尿でもクレアチニン当りでAS-A活性をみることによって24時間尿のAS-A活性値を推定することが可能であり, 外来患者を含めた臨床応用ができると考えた. 2) 尿中AS-A活性の正常値は36±12units/mgクレアチニン (mean±SD) で, 尿路感染症, 膀胱癌既往例, 前立腺癌, 泌尿器以外の他臓器癌では, いずれも正常群との有意差はなく, 膀胱癌患者のみで有意 (p<0.001) に高い値 (83±35) で示した. また膀胱癌手術前後の尿中活性では術後に有意 (p<0.001) に低下し正常群との差がなくなった. 3) 組織中のAS-A活性は正常膀胱粘膜 (7.2±1.8units/mg蛋白) と膀胱癌組織 (14.7±4.1) の間で有意 (p<0.001) の差がみられ, さらに等電点分画では癌組織のAS-Aには正常膀胱粘膜のそれにはない酸性側の成分が検出された.
以上より尿のAS-A活性の測定は患者に苦痛を与えない膀胱癌のスクリーニング, 経過観察における一マーカーとなりうる可能性がある.

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