日本泌尿器科學會雑誌
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Congenital Mesoblastic Nephroma の2例
馬場谷 勝廣塩見 努平尾 佳彦平尾 和也平松 侃岡島 英五郎青山 秀雄金 哲秀橋本 憲治小川 浩史
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1980 年 71 巻 8 号 p. 961-968

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抄録

以前より, 新生児腎腫瘍の中には, Nephroblastoma に類似してはいるが, その臨床経過や組織像が異なつた腫瘍の存在が知られていた. 最近になつて, この腫瘍は, congenital mesoblastic nephroma と呼ばれるようになつてきたが, われわれも本腫瘍と考えられる2例を経験したので, ここに報告する.
症例1: 生後4日目の女児で, 左側腹部腫瘤に気付き来院する. 患者は, 生下時2,250gの未熟児で, 母体妊娠中に羊水過多を指摘された. 1976年8月11日左腎摘出術施行したころ, 腫瘍は6.5×5.5×3.7cmの大きさで69gの重量を有し, 割面は白黄色で, 出血, 壊死もなく, いわゆる watered-silk appearance を呈していた. 組織学的に腫瘍は紡錘形細胞よりなり, それらの中には未熟な軟骨様組織や類洞様の脈管腔が散在していた.
症例2: 生下時2,800gの女児が, 生後2日目, 右腹部腫瘤にて来院. 症例1と同様に羊水過多を合併したが, 特に異常分娩はなかつた. 1978年2月7日右腎摘出術施行, 摘出腎は10×15×10cm, 重量170gで, 表面平滑で, 割面は白黄色を呈しており, 組織学的には症例1とほとんど同様の所見であつた.
以上2症例とも, 術後とくに補助療法はおこなつていないが, 現在, 再発, 転移の徴候もなく発育良好であり, なお経過観察中である.

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