日本口腔腫瘍学会誌
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シンポジウム2:「早期口腔癌に対する新たな診断法の確立」
特殊光観察型内視鏡システム(NBI,AFI,IRI)による口腔扁平上皮癌stage I,II症例の観察(原著)
岩本 修楠川 仁悟
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キーワード: NBI, AFI, IRI, 口腔癌, 口腔扁平上皮癌
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2013 年 25 巻 3 号 p. 72-88

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抄録

光工学の進歩は,医科領域にも大きな転機をもたらした。とくに特殊光を応用した癌の診断や治療においては多くの有用性が報告されている。今回われわれは,特殊光下の観察が可能な内視鏡システム(オリンパスメディカル社製)により口腔扁平上皮癌stage I,II症例の観察を行いその有用性について検討した。
(1)狭帯域光観察(Narrow Band Imaging: NBI):NBIでは癌病変の視認性が向上するとともに拡大観察を併用することで微小異常血管像(有馬分類type3,4:食道癌の異常血管)や粘膜変化像(粗造白色像や茶褐色像)を観察できた。さらに舌扁平上皮癌におけるにNBIの病変範囲とヨード生体染色のヨード不染帯領域はほぼ一致していた。
(2)自家蛍光観察(Auto-Fluorescence Imaging: AFI):AFIでは癌病変は自家蛍光の弱い赤紫色,逆に正常な粘膜では自家蛍光の強い緑色に表示されたが,全体的に画像が粗く点状の散乱光も認めた。また切除物の割断面のAFIでは自家蛍光の強弱差により癌の深部領域を確認することができた。カスタマイズした実体蛍光顕微鏡で同様に割断面を観察すると,より明瞭に病変領域を確認できた。割断面で観察された病変領域を病理組織像と比較すると,その領域性はほぼ一致していた。
(3)赤外光観察(Infra-Red Imaging: IRI):IRIではインドシアニングリーン(ICG)の投与後,病変部に青色の発色を認めた。
これら特殊光での観察は,正常領域を背景として口腔扁平上皮癌の異常像が強調されて表示されるため,診断や治療に有用となる可能性が示唆された。

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© 2013 一般社団法人 日本口腔腫瘍学会
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