日本消化器外科学会雑誌
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症例報告
血栓除去溶解療法にて保存的加療を行ったが退院7か月後に消化管穿孔を来した上腸間膜動脈塞栓症の1例
黒田 桂子淀谷 光子大前 健一金谷 欣明松田 直樹藤井 将義塩見 耕平治田 賢岩田 一馬丸山 修一郎平井 隆二
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2019 年 52 巻 2 号 p. 95-105

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抄録

症例は心房細動のある70歳の男性で,突然の腹痛を主訴に受診,造影CTにて中結腸動脈分岐部レベルで血栓を認め上腸間膜動脈(superior mesenteric artery;以下,SMAと略記)塞栓症と診断された.明らかな腸管壊死所見はなく,血栓除去・溶解療法を施行し,SMA末梢や回結腸動脈に一部残存した血栓に対し,ウロキナーゼ持続動注を3日間継続した.動注終了時のCT angiographyで回結腸動脈の描出は改善していた.遅発性腸管壊死・穿孔に注意して慎重に保存的加療を行い,第49病日に自宅退院となった.定期通院し全身状態に問題なかったが,退院7か月後に突然の下腹部痛を主訴に受診,CTで盲腸の穿孔を認めた.回盲部切除術が施行され,切除腸管には病理組織学的に虚血に伴う慢性期の変化を認めた.SMA塞栓症は広範な急性腸管虚血を生じる重篤な疾患であるが,急性期に保存的加療しえた後の慢性期合併症についての報告はまれであり,示唆に富んだ症例と考え報告する.

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