日本臨床細胞学会雑誌
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福島原発事故と細胞診
坂本 穆彦逸見 正彦田﨑 和洋橋本 優子
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2014 年 53 巻 6 号 p. 528-531

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抄録

2011 年 3 月に発生した東日本大震災による東京電力 (株) 福島第一原子力発電所の事故後, 放射性ヨード (I-131) をふくむ種々の放射性物質が環境中に放出された. この中でもチェルノブイリ原発事故によるデータを参考にすると, 放射性ヨードによる小児甲状腺癌の誘発が危惧された. そのため, 政府ならびに県は福島県立医科大学を拠点とする福島県県民健康管理調査事業の柱の一つに甲状腺検査を設定した. すなわち, 原発事故発生時に 18 歳以下であった全県内居住者約 36 万人をその対象としてスクリーニングのための甲状腺超音波検査をスタートさせた. このうち, 精密検査が要請された場合には, 甲状腺穿刺吸引細胞診が行われる. 2014 年 3 月までに 1 巡目の検査が先行調査として行われ, その後は 5 年ごとの本格調査に移行する. 現在は先行調査が進行中であるが, すでに 75 人が細胞診にて悪性ないし悪性の疑いと判定された. このうち手術をうけた 34 名中 33 名に乳頭癌が見出された. これらの乳頭癌が放射線誘発癌か否かは現段階では判断は困難であり, 今後の推移の中で考察される. 本稿では原発事故に対してとりくまれている健康管理調査の中で甲状腺細胞診が果たしている役割について紹介する.

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© 2014 公益社団法人 日本臨床細胞学会
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