日本臨床細胞学会雑誌
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症例
胸腺に発生した腺癌の 1 例
中川 美弥松岡 拓也溝上 美江田上 圭二神尾 多喜浩
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2009 年 48 巻 3 号 p. 124-128

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抄録

背景 : 胸腺に発生する腺癌はまれである. 今回, 胸腺に発生した腺癌を経験したので, 細胞像を中心に報告する.
症例 : 47 歳, 女性. 検診の CT で縦隔に異常陰影を指摘された. CT や MRI では, 上縦隔に 5 cm 大の異常陰影を認め, 胸腺腫が疑われた. 胸腔鏡下針生検で悪性と診断されたため, 腫瘍摘出術が施行された. 捺印細胞診では, 少量の壊死を背景に, N/C 比の高い腫瘍細胞がシート状, 柵状または散在性に出現していたが, 部分的に核配列の乱れた腺腔様構造を認めた. 腫瘍細胞には核の大小不同と核形不整, 粗大顆粒状の核クロマチンの増量がみられ, 明瞭な核小体と核分裂像を認めた. なかには細胞異型に乏しい腺腔構造が観察された. 組織学的には腫瘍細胞が腺管状または乳頭状に増殖し, 腺腔内壊死や核分裂像を認めた. 癌辺縁にはハッサル小体を有する胸腺組織が観察された. 免疫組織化学的に腫瘍細胞表面の一部に CD5 が陽性であり, 胸腺原発の腺癌と診断された.
結論 : 前縦隔腫瘍の細胞診で, 異型が弱くとも明らかな腺腔構造をとり, 核の大小不同や核形不整, 核配列の乱れを示す上皮細胞が鏡検される場合には, 胸腺由来の腺癌も考慮すべきである.

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© 2009 公益社団法人 日本臨床細胞学会
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