2012 年 52 巻 8 号 p. 576-580
脳症を呈した猫ひっかき病(CSD)の一例を経験した.症例は34歳女性,約1カ月前より微熱および鼠径部リンパ節腫脹を自覚していた.発熱および嘔気・嘔吐をともなう頭痛出現後,意識障害が出現し,受診した.髄液検査で大きな異常なく,頭部MRI正常であったが,骨盤造影CTにて壊死性リンパ節炎の所見をみとめ,外科的リンパ節生検にて肉芽腫様変化をみとめた.猫を飼っているという生活歴を考慮し,生検組織をもちいてCSDの病原体であるBartonella HenselaeのPCR検査施行し,陽性であることが判明しCSD脳症と診断した.本邦ではCSD脳症の報告が非常に少なく,見逃されている可能性があるため注意が必要である.