2009 年 49 巻 2+3 号 p. 109-114
症例は孤発型クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)の68歳男性である.左下肢の随意運動障害で発症後,発症1カ月後から左上肢が自己の意思に反して動く異常運動をみとめた.失行,錐体路徴候,感覚障害の要素はなく,ジストニアや鏡像運動ともことなり他人の手徴候であると考えた.同時期の脳血流SPECTで右半球の血流低下をみとめたが,頭部MRIには異常をみとめなかった.他人の手徴候は,発症2カ月半以降,ミオクローヌス,進行性認知機能低下にともない消失した.本例では,当初,本徴候出現時にはMRIでの異常はなく,診断に苦慮した.まれであるがCJDの病初期に他人の手徴候をみとめることがあり,診断の上で注意すべきと考え報告した.