地震により人の生存空間が失われる建物被害パターンである層破壊を精度よく推定できれば,人的被害の推計や迅速な災害対応の実施に役立つ.本研究では,2016年熊本地震における熊本県益城町の住家被害認定調査結果に基づいて,層破壊建物を抽出し被害分析を行うとともに,推定地震動分布と組み合わせて層破壊被害関数を構築した.被害分析の結果,木造建物の層破壊率は非木造と比較して大きく,建築年代が古くなるほど大きくなる傾向がみられた.また,益城町の層破壊被害関数は,1995年兵庫県南部地震の西宮市の結果に基づく経験式と比べて,同一の最大地表速度における層破壊率が低くなる傾向がみられたが,1982年以降に建てられた建物を対象とする関数においては,層破壊率が同等の水準であると考察された.