栄養学雑誌
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原著
大学生男子陸上長距離選手の骨状態と骨におけるビタミンK栄養状態の関連
虎石 真弥上西 一弘
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2011 年 69 巻 3 号 p. 115-125

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抄録

【目的】大学生男子陸上長距離選手における骨障害の早期予知・予防を目的とし,骨におけるビタミンK栄養状態の変化と骨状態について検討した。
【方法】我々が栄養指導を行っている大学生男子陸上長距離選手のうち,骨塩量および骨密度,身体測定,血液検査,尿検査,食物摂取頻度調査,陸上長距離競技歴,月間走行距離量に関する調査のデータがすべて揃った42名に対し,骨状態と栄養素摂取を横断的,縦断的に検討した。
【結果】栄養指導前における骨状態は骨吸収マーカーが基準値を上回り,骨吸収の亢進が示唆された。カルシウム摂取量は日本人の食事摂取基準2010年版の推奨量を下回り,ビタミンK摂取量は目安量を上回る値であった。骨でのビタミンK栄養状態の指標である血清低カルボキシル化オステオカルシン(ucOC)は,骨形成および骨吸収マーカーと正の相関を示し,また栄養指導前において骨代謝が亢進していた血清ucOCの高値群では,栄養指導開始8ヶ月後,カルシウム摂取量およびビタミンK摂取量の有意な増加により,血清ucOCは有意に減少した。
【結論】骨吸収マーカーの高値による骨吸収が亢進した骨状態に対し,カルシウムおよびビタミンK摂取量の有意な増加により血清ucOCは有意に減少した。本研究対象者のビタミンK摂取量は目安量を上回る値であったが,より良い骨状態の獲得に必要なビタミンK摂取量については更なる検討が必要である。

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© 2011 特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
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