季刊地理学
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研究ノート
2時期のレーザーデータによる海の中道における海岸地形の変化の分析
黒木 貴一川田 佳明磯 望黒田 圭介
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2010 年 62 巻 2 号 p. 71-82

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抄録

福岡県の海の中道に関して,2002年と2007年のレーザーデータに,衛星データによるNDVIと長期間の現地調査の結果を加味することで,5年間の標高変化量の分布を明らかにした。この結果から,海岸周辺で現在生じている地形変化の傾向を検討した。
海の中道の地形は,砂浜,海食崖,平坦面,砂丘1,砂丘2,砂丘3,放物線型砂丘に区分できる。NDVIが0以下で詳細な地形変化を検討できる海岸沿いの範囲Sには,砂浜,海食崖,平坦面,砂丘1が分布する。範囲Sでは5年間に,+5 m以上や-4 m以下の標高変化量がみられた。標高変化量の分布から,波浪が砂丘を侵食して海食崖が発達し,そこで生産された砂が沿岸流により北東から南西に移動し,突堤や突出する海岸線の沿岸流上手側に堆積して砂浜が発達しつつあること,北からの卓越風が砂を移動させ,海食崖の風下に平坦面や砂丘が発達しつつあることが推察された。また砂丘の発達過程は,隣接する植林域の規模に影響を受けている。
地形区分毎に平均した5年間の標高変化量は,砂丘1で+0.61 m,砂浜で+0.44 m,平坦地で+0.15 m,海食崖で-0.86 mである。これらの標高変化量とNDVIとの関係から,砂丘1では松林が砂を捕捉して堆積が生じていること,海食崖が後退して砂浜に変化していることが推測された。

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© 2010 東北地理学会
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