日本セトロジー研究
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北海道にストランディングしたコマッコウの胃内容物
松田 純佳松石 隆
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2021 年 31 巻 p. 5-9

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抄録

コマッコウKogia brevicepsは全世界の温帯から熱帯域に生息するハクジラ類である.日本沿岸では 本州の太平洋側でしばしばストランディング(座礁・漂着・混獲)報告があるが,北海道沿岸では現在まで6個体しか報告されていない.また,日本周辺海域における食性に関する報告は見当たらない.本研究では,2011~14年に北海道太平洋側沿岸にストランディングしたコマッコウ3個体の胃内容物を調査した.その結果,8科10種の頭足類,および1種の魚類が出現した.どの個体もテカギ イカ科イカ類を摂餌していた.次いで,3個体中2個体から,ホタルイカWatasenia scintillans,ヒカリテカギイカGonatus pyros,ツクシユウレイイカChiroteuthis calyxが出現した.個体数組成では,種不明テカギイカ科イカ類Gonatidae spp.で73.0%となり,次いでホタルイカ6.2%,ツクシユウレイイカ3.4%となった.1個体からのみ魚類が出現し,種同定の結果スケトウダラGadus chalcogrammusであった.餌生物のサイズ組成は,最も小型の餌生物が外套膜長29.4 mmのツクシユウレイイカであり,最も大型の餌生物が外套膜長420.2 mmのキタノスカシイカGaliteuthis phylluraであった.以上より,コマッコウは北海道沿岸において主に中深層性の頭足類を利用していることが明らかになった.

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© 2021 日本セトロジー研究会
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