応用地質
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論文
大淀川下流の地形縦断曲線からみた浸水の地形条件
黒木 貴一磯 望黒田 圭介宗 建郎後藤 健介
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2015 年 55 巻 6 号 p. 307-316

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抄録

 大淀川と本庄川の微地形に関し5 mDEMによる地形分析結果と,2005年台風14号での内水氾濫による浸水域との関係を検討した.本研究は陰影図による地形区分,地形縦断曲線による浸水域の地形量の評価で構成される.地形縦断曲線は地形別の平均標高と比高に基づく.上下流方向に見た地形縦断曲線の凹凸形状を識別し,堤内外でその対照を行って地形量を評価した.
 平均標高による地形縦断曲線では,上流よりも下流の標高が上昇する凸部を識別でき,堤外地形の凸部は堤内地形のものより少し下流に出現する.各凸部は支流の合流点や河口の近傍にある.比高による地形縦断曲線は,平均標高による曲線よりも凹凸形状が明瞭となる.このため平均標高による曲線の凸部に対応する約5 km延長の凸部に加え,約1 km延長の小凸部が識別できる.各凸部の範囲では,堤外地形は,堤内地形のものよりも下流で比高が極大となる.小凸部は合流での流速低下による土砂堆積の増加を,凸部は河道の屈曲部や狭窄部での流速低下による土砂堆積の可能性も示す.
 比高による地形縦断曲線では,浸水区間では堤外地形の比高が高まり,堤内地形の比高は低まる,非浸水区間では堤内地形の比高が高まり,堤外地形の比高は低まる傾向がある.これより低地と高水敷にあたる河床1の比高差に基づくグラフの凹凸形状から内水氾濫による浸水区間と非浸水区間を識別できることが分かった.

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© 2015 一般社団法人 日本応用地質学会
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