2005 年 45 巻 6 号 p. 281-290
新潟県東頸城地域の地すべり地では高濃度Na-Cl型地下水がしばしば見出される. 本研究では, 宇津俣地すべり地等で電気伝導度計を用いた詳細な地下水 (孔内水) 検層, 地下水の化学分析, ならびに酸素同位体比測定を実施した. その結果, 滑動が活発な地すべり土塊における地下水断面では, 化学躍層的な電気伝導度の急激な増加があり, 不活発な地すべり土塊では電気伝導度の有意な変化は認められない. 地すべり土塊内における地下水の水質は, 表層部より深部へ向かって, (1) Ca-HCO3, Na. Ca-HCO3型, (2) Na-SO4型, (3) Na-HCO3型, および (4) Na-Cl型に分類される. 酸素同位体比と塩化物イオン濃度の関係より, Na-Cl型地下水は西山層相当の続成作用を被った化石海水と天水起源の地下水との混合によって形成された. Na-Cl型地下水は異常高圧熱水としての深部化石海水が断層に沿って上昇し, 地すべり土塊に供給されていることを示唆する.