日本栄養・食糧学会誌
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総説
栄養政策・公衆栄養学のための基礎栄養学研究の在り方:ビタミンを中心として
桒原 晶子
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2025 年 78 巻 1 号 p. 21-26

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抄録

近年の日本人の食事摂取基準では, 欠乏症の回避のみならず, それよりも軽度の不足の回避を検討する傾向にある。不足回避の検討では, バイオマーカーを用いざるを得ない。しかし, コンセンサスの得られているバイオマーカーは限定的であり, 新しいバイオマーカーの確立が必要となる。また, 日本人の食事摂取基準 (2025年版) では, エネルギー・栄養素との関連を記述する疾患等として, 従来の目標量の対象疾患 (高血圧・脂質異常症・糖尿病・慢性腎臓病) に加えて, 生活機能の維持・向上の観点から, 骨粗鬆症が追加された。ビタミンDは骨粗鬆症に関係するが, 骨粗鬆症の予防のための摂取量は, 通常の食事から十分に補える量ではないため, ビタミンDの目標量の設定はされていない。ビタミンD栄養状態には, 食事からの摂取のみならず, 皮膚での産生分も影響する。紫外線照射量や食文化が諸外国とは異なることを考慮すると, 日本人を対象としたビタミンD栄養状態の実態とその決定因子を明らかにする質の高い研究が必須である。しかし, わが国からのヒト対象のビタミン栄養学研究は乏しい現状にあるため, 質の高い研究を精力的に進めるための体制整備が急務である。

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