日本心臓血管外科学会雑誌
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[先天性疾患]
左側相同を伴い37年後に再手術を要した遺残心房中隔欠損の1例
緒方 裕樹上田 英昭松葉 智之山下 雄史永冨 脩二立石 直毅川井田 啓介豊川 建二今釜 逸美井本 浩
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2019 年 48 巻 5 号 p. 313-315

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抄録

心房中隔欠損(atrial septal defect : ASD)の閉鎖術ではシャント遺残に気をつけなければならないが,欠損孔の下縁がない場合には特に注意を要する.初回手術から37年後にASDの遺残短絡に対し再手術を行った症例を経験した.17歳時に他院でASD閉鎖術を受けた54歳女性で,労作時の息切れを主訴に前医を受診し当院に紹介となった.精査の結果,左側相同および心房中隔欠損の遺残短絡とそれに伴う肺高血圧症と診断し手術を行った.術中所見では肝静脈の開口部に跨がるように遺残ASDを認めた.欠損孔の上縁から頭側に向かって前回手術時に直接閉鎖を試みたと思われる縫合線を認めた.いわゆる“下縁欠損ASD”に対し下端の閉鎖が不完全であったための遺残短絡と考えられた.再閉鎖を行い,術後は心合併症なく自宅退院した.ASD下縁の閉鎖は特に確実に行うよう心掛け,術後のチアノーゼ,心不全の発生に留意する必要がある.

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