2016 年 45 巻 6 号 p. 272-276
症例は61歳女性.意識消失発作に対し行われた心臓超音波検査にて左室流出路に12×13 mm大の円形で辺縁は平滑,内部は低エコーの腫瘤を認め,左室流出路狭窄に伴う意識消失発作と診断し腫瘤摘出術を行った.腫瘤は左冠尖弁輪下部から僧帽弁前尖弁輪にかけて認め,表面は平滑,弾性軟で内部には黄色クリーム状の内容物が充満していた.病理検査では中央は融解変性し嚢胞状で粗大顆粒状の石灰化沈着の周囲に炎症性細胞浸潤と線維芽細胞の増生を認めた.腫瘍性細胞は認めなかった.術前の臨床症状,血液データ,培養所見より膿瘍は否定的であることより,乾酪様石灰化病変と判断した.乾酪様石灰化病変は僧帽弁輪石灰化の亜型と考えられている稀な非腫瘍性病変であり文献的考察を加えて報告する.