日本視能訓練士協会誌
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内斜視を主訴とした調節痙攣の治験例
野口 清子生田 由美久保田 伸枝
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2001 年 29 巻 p. 243-247

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抄録

調節痙攣は、著明な近視化とそれに伴う輻湊が起こり、学童期の小児にみられることがある。原因は諸説挙げられるが、下垂体腫瘍などの器質的疾患が合併していることもあるため、その除外診断が優先される。
今回我々は、視力低下と複視を主訴に来院し、初診時に行った屈折検査のためのサイプレジン®点眼により、複視が劇的に消失した1症例を経験した。当初これらの原因は、調節痙攣と考え、器質的疾患を否定した上で、各種調節検査を経時的に行った。その結果、両眼視下の調節検査と片眼での静的調節検査では、両者の結果に矛盾がみられた。また、静的調節検査で測定毎の検査結果にばらつきがみられたこと、視力検査でもトリック法に反応するなどの心因性の視覚障害と思わせるような結果が得られたこと、欲求不満や環境の変化がみられたことから、心因による一過性の調節痙攣ではないかと思われた。サイプレジン®点眼により複視が劇的に消失したことも心因が関係しているのではないかと考えた。
本症例のような原因不明の調節痙攣や内斜視をみた場合、今までの経過や経験を基に、安易に心因性と考え検査や治療に取り組むべきではなく、まず原因の精査と鑑別すべき疾患との鑑別診断をしっかりと行った上で、器質的に何も異常が認められない場合は現症について対処していくべきであると思われた。

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