関西病虫害研究会報
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原著論文
薬剤散布および薬剤への展着剤の加用がシンガポールへの低温海上輸送後に発生するウンシュウミカン果実の腐敗に及ぼす影響
武田 知明衛藤 夏葉岡室 美絵子井沼 崇中野 龍平福田 文夫河井 崇深松 陽介西銘 玲子
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2020 年 62 巻 p. 113-119

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抄録

ウンシュウミカンのシンガポール輸出後の果実腐敗軽減技術確立のため,いくつかの試験を実施した。県内の44圃場で採集したカンキツ緑かび病菌110菌株のチオファネートメチル剤およびベノミル剤耐性菌率は 8.2%と低く,イミノクタジン酢酸塩剤の耐性菌は確認されなかったことから,3剤の耐性菌による防除効果の低下はないものと思われた。リーファーコンテナを用いた海上輸送試験において,収穫前のチオファネートメチル水和剤散布はコンテナから搬出19日後の腐敗果率を無散布の約 41%に抑制したことから,本剤の散布は輸出後の果実腐敗軽減に実用性がある。パラフィン系展着剤をチオファネートメチル水和剤またはイミノクタジン酢酸塩液剤に加用することで,人工降雨条件下での緑かび病菌接種試験では発病箇所率の低下が認められ,上記と同様の海上輸送試験においては,搬出14日後の腐敗果率が低下する傾向がみられた。これらのことから,収穫前の殺菌剤へのパラフィン系展着剤の加用は輸出後の果実腐敗に対する防除効果を向上させると考えられた。

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