第四紀研究
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有孔虫化石が示す完新世初~中期の山陰地方沿岸域における対馬海流
高田 裕行板木 拓也池原 研山田 和芳高安 克己
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2006 年 45 巻 3 号 p. 249-256

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抄録

日本海南部沿岸域における完新世初~中期の暖水系生物相と対馬海流の挙動との関係を理解するために, 出雲平野北西部と鳥取沖でそれぞれ採取された柱状試料HS02とGH87-2-308について, 浮遊性有孔虫化石を検討した. GH87-2-308における暖水系種Globigerinoides ruber の産出傾向は, 約8,300~8,000年前と約7,300~6,800年前の2つの時期に, 対馬海流の影響が強かったことを示す. 本種はHS02でも, 暖水系底生生物相が産出する約7,800年前の層準で見出される. 日本海のより沖合 (たとえば隠岐堆) の研究事例では, 暖水系微化石の産出は約7,300年前に普遍的なものの, 同様な普遍的産出は約8,300~7,800年前では不明瞭である. よって, 約8,300~7,800年前の対馬海流の影響は, 沿岸域で顕著に現れ, それが当時の山陰地方沿岸域における暖水系生物相の産出傾向を左右したと考えられる.

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© 2006 日本第四紀学会
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