2021 年 54 巻 7 号 p. 353-359
54歳男性.2019年8月に腰痛で近医を受診した際,左足趾切断部に壊疽を認め,骨髄炎の診断で入院となった.左下腿部まで壊疽が悪化したため,第10病日に当院に転院し,形成外科で左下腿部を切断した.創部からSerratia marcescensが分離培養された.経過中に腎機能障害,血尿を伴うネフローゼ症候群を呈し,補体低値,ASO高値を認めた.第26病日に施行した腎生検において,組織像は管内増殖性糸球体腎炎を呈し,蛍光抗体法でIgAの優位な沈着を認めたため,IgA優位沈着性感染関連糸球体腎炎(IgA‒dominant infection‒related glomerulonephritis:IgA‒IRGN)と診断した.尿毒症症状を認めた第39病日に血液透析を開始し,入院後にCTで診断された化膿性脊椎炎に対してはvancomycinおよびceftriaxoneを投与した.徐々に腎機能は改善し,第61病日に血液透析を離脱した.離脱後も腎機能の悪化を認めず,第133病日に退院した.IgA‒IRGNに対するステロイドの有効性は示されておらず,感染が持続している場合には適切な抗菌薬を選択することが重要である.