日本透析医学会雑誌
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短報
透析導入基準(旧厚生省研究班作成)を透析医はいかに使用し,また評価しているか?
土井 俊樹佐田 憲映西野 克彦木村 友則森永 貴理山本 卓冨永 直人柴垣 有吾長谷川 毅大西 良浩福原 俊一
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2009 年 42 巻 11 号 p. 879-884

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抄録

【背景】1991年に厚生科学研究・腎不全医療研究班により慢性腎不全透析導入基準(以下,厚生省基準)が提案されてから長期間が経過し,慢性腎不全に対する治療の環境は大きく変化している.現在の透析医療における厚生省基準の活用実態は不明である.【目的】厚生省基準を透析医がいかに使用し,また評価しているかを明らかとする.【研究デザイン】記述疫学的研究(自記式調査表による横断的調査).【研究施設】筆者所属および関連の28透析施設.【対象】透析医療に従事し,調査の協力に同意を得ることのできた64名の医師.【結果】24施設53名の医師から回答を得た.回答者の医師経験年数は平均13.2±8.2年であった.厚生省基準を使用している医師は36%であった.厚生省基準を使用していない医師の中では「点数の重み付けが臨床的な観点から妥当でない」という意見が多かった.透析導入時の項目として,心不全症状,腎機能低下,体液貯留,食欲低下,電解質異常はより重視されていた.【結論】透析導入において,緊急な改善を必要とする項目を中心として総合的に判断している実態が示された.厚生省基準は導入時に評価するべき項目が網羅的に選択されていると考えられるが,暗黙的に選択された項目とアウトカムとの関連を検証し,アウトカムに依拠した透析導入基準の再検討を行う必要があるかもしれない.

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© 2009 一般社団法人 日本透析医学会
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