日本透析医学会雑誌
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血漿交換と副腎皮質ホルモンの併用により救命し得た重症型アルコール性肝炎の1例
平野 智哉吉岡 克宣寺本 賀恵森川 貴岡田 範之小西 啓夫今西 政仁木岡 清英田中 史朗藤井 暁
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2003 年 36 巻 4 号 p. 285-288

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抄録

症例は43歳男性. 20歳よりアルコール依存があり, 32歳より糖尿病にて通院中であった. 平成13年4月下旬より食欲不振, 嘔気があり5月より黄疸が出現したため5月8日入院となった. 入院時著明な黄疸 (総ビリルビン値17.9mg/dL), 肝腫大とAST優位の肝酵素の上昇があり, 禁酒, 補液にて経過観察をしたが黄疸の進行, 著明な白血球数増加 (31,840/mm3), 腹水が出現し, 重症型アルコール性肝炎と診断した. 炎症性サイトカインの除去を目的に血漿交換を6回施行するとともに, サイトカイン産生抑制目的で副腎皮質ホルモンの投与も行ったところ白血球数は低下し, 黄疸, 腹水も減少し全身状態の改善が得られた. 肝炎回復後の肝生検では肝細胞の脂肪沈着と線維の増生を認め, 重症型アルコール性肝炎の回復期の所見であった. 重症型アルコール性肝炎は極めて予後不良の疾患であり, 予後改善のためには, 早期より血漿交換, 副腎皮質ホルモン投与を含めたサイトカインネットワークの改善を目指した治療を行うことが重要と考えられた.

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