日本森林学会誌
Online ISSN : 1882-398X
Print ISSN : 1349-8509
ISSN-L : 1349-8509
論文
台風と積雪がスギのクローン構造に与える影響
長島 崇史木村 恵津村 義彦本間 航介阿部 晴恵崎尾 均
著者情報
ジャーナル フリー
電子付録

2015 年 97 巻 1 号 p. 19-24

詳細
抄録

攪乱がスギ天然林のクローン構造に与える影響を明らかにするため,台風攪乱の被害地と被害を受けていない成熟林分にプロットを設置し,スギの空間分布やサイズ構造,クローン構造を調べた。高い個体識別能を示すマイクロサテライト(SSR)マーカー8遺伝子座を用いてスギのクローン構造を調べた結果,クローン構造は(a)同程度の DBH の幹がまとまって分布するジェネット,(b)DBH の差が大きい幹が空間的な広がりを持って分布するジェネット,(c)台風攪乱による根返り個体の枝が直立し,多数の小径幹が直線的に分布するジェネットの三つのパターンに分けられた。(a)と(b)は積雪によって稚樹や成木の枝が地面に接地し伏条によって生じたもの,また,(c)は,台風攪乱による根返り個体の枝が再生したものと考えられた。多雪地帯のスギ天然林において台風と積雪は多様なクローン構造を形成する要因の一つと考えられる。

著者関連情報
© 2015 一般社団法人 日本森林学会
前の記事 次の記事
feedback
Top