日本森林学会誌
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論文
日本におけるトレイルランニングの林地利用の現状と動向
―コンフリクトの表面化とランナーの対応―
平野 悠一郎
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2018 年 100 巻 2 号 p. 55-64

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抄録

 本稿では,日本でのトレイルランニングの普及と課題解決に携わってきた有志ランナーへの聞き取り調査をベースとし,関連資料・データを踏まえて,その林地利用の現状と動向を体系的に把握した。トレイルランニングは,主に山や森林に続くトレイルを走る新しい林地利用として,日本でも2000年代以降に,主要な大会開催,ランニングブーム,中高年を含めた健康・体力維持や自然志向を背景に普及が進んだ。その一方で,ランナーや大会の急増に伴い,ハイカー等の従来の利用との軋轢が増加し,トレイルの植生破壊や事故等の安全管理面も懸念され,最近では東京都「自然公園利用ルール」(2015年)等を通じて,トレイルランナーの林地利用の規模・要件を制約する動きも生じてきた。この課題解決に向けて,各地での大会開催や普及活動を担ってきた有志ランナーによる「日本トレイルランナーズ協会」が設立され,ランナーのマナーや社会的地位の向上を組織的に担う動きが見られている。また,過疎化に直面する自治体・集落等との連携に基づき,大会開催,普及活動,トレイルの維持再生を通じて,森林の有効活用による地域活性化を積極的に担おうとする取り組みも確認された。

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© 2018 一般社団法人 日本森林学会
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