日本耳鼻咽喉科学会会報
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核DNA量解析による甲状腺乳頭癌の組織構築別増殖能の検討
坂 哲郎山本 祐三伊藤 尚井上 功今中 政支岡東 史之高橋 宏明
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1994 年 97 巻 6 号 p. 1034-1040

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抄録

甲状腺乳頭癌で,同一腫瘍内に異なった組織構築を有する6症例について,DNA顕微蛍光測光法を用い組織構築別に腫瘍細胞の増殖動態を検討し,次のことが明らかになった.
1. 甲状腺乳頭癌の増殖活性は同一腫瘍内でも病理組織像の相違により,差がみられる場合があることが判明した.すなわち,病理組織像の相違は増殖活性の相違を反映している可能性が高いことが明らかになった.
2. 周囲組織へ浸潤がみられる場合,浸潤部位の増殖活性が腫瘍中心部のそれより亢進する傾向が認められた.従って,周囲組織浸潤部位など腫瘍先進部の増殖活性を知ることが,その腫瘍の生物学的悪性度のより正確な評価につながると考えられた.
3. 核DNA定量によるS+G2M期細胞比率と,組織学的分化度は比較的相関した成績を示した.しかし組織学的分化度が同じでも増殖活性が明らかに異なる場合もあり,核DNA定量は増殖活性の評価に有意義な方法であると考えられた.

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