症例は64歳女性. 1996年に左耳下腺多形腺腫の摘出手術を施行後, 3回の局所再発を繰り返し, 同様の摘出術が施行された. 2011年1月に右下肢痛を認め, 当院整形外科での全身のCT検査にて右腎, 仙骨, 両肺に腫瘍を認めた. 腎癌の仙骨, 肺転移の診断にて仙骨部の生検と右腎摘出が施行された. 病理結果は多形腺腫であり, 最終的に耳下腺の転移性多形腺腫と診断した. 同年6月に仙骨転移に対し緩和的放射線照射を施行し, 8月に局所再発を来した原発巣と周囲の腫脹リンパ節を摘出した. その後, 肺腫瘍も摘出し, 病理結果はすべて多形腺腫であった. 本症例は多形腺腫の多臓器転移例であり, 腎への転移について本邦で初めての報告である.