日本耳鼻咽喉科学会会報
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原著
新生児聴覚スクリーニング後に精密聴力検査を実施した乳児例の検討
岡野 高之岩井 詔子谷口 美玲伊藤 壽一
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2014 年 117 巻 10 号 p. 1249-1257

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抄録

 本邦で新生児聴覚スクリーニング (newborn hearing screening: NHS) が普及してきた現在でも, その意義や判定結果の取り扱いについて医療現場で混乱がみられる. 今後, 費用対効果を含めた NHS の評価を継続し, NHS をより洗練されたものとするためには, 精密検査実施機関としての役割とその実態を明らかにし, スクリーニング機関との連携や療育と治療の指導が, 効率的かつ効果的に運用されることが必要である. 今回2006年から2012年までの7年間に, NHS を経て満1歳までに京都大学医学部附属病院耳鼻咽喉科に紹介受診し精密聴力検査を施行した106例について, 後ろ向きカルテレビュー方式で検討した. NHS で片耳か両耳かにかかわらず refer と判定されたものの79.2%が何らかの難聴を有すると診断され, 特に両耳 refer と判定された53例中では47例 (88.7%) と高い陽性的中率であった. 28例が補聴や療育を必要と判断され, 全体の26.4%であった. 人工内耳適応となった全例で初回検査の ABR 検出閾値が両耳とも105 dBnHL 以上であり, このような例では診断確定時より人工内耳に向けた準備を行っていく必要があると考えられた. さらに, NHS で pass と判定された例や, NHS を受けなかった例の中には, 補聴や療育が必要と診断された例が存在することから, 難聴児の発見のためには NHS は健診などと組み合わせながら運用することが望ましいと考えられた.

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© 2014 一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
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