2007 年 110 巻 3 号 p. 95-102
中咽頭癌は頸部リンパ節転移進行病変が多く化学放射線療法によって原発巣が制御されてもリンパ節転移が制御されないことがある. また化学放射線療法後のリンパ節の効果判定は難しい. われわれは2001年からT1-3かつN2-3の中咽頭癌12例に対しドセタキセル併用放射線療法に加えplanned neck dissection (PND, 計画的頸部郭清術) を行った.
本研究は, ドセタキセル併用放射線療法の頸部リンパ節転移病変に対する治療効果を明らかにすること, リンパ節における癌細胞残存の予測因子を明らかにすること, PNDの安全性を検証することを目的とした.
PNDによって得られたリンパ節標本を病理組織学的に検討したところ, ドセタキセル併用放射線療法のpathological CR率は58.3%であった. PND後の全症例の2年頸部制御率は91.7%であったことから, PNDはN2-3の治療成績の向上に寄与している可能性が高い. TN分類, ドセタキセル総投与量, 照射線量, MRIにおけるリンパ節の最大径および縮小率は, いずれも癌細胞残存の予測因子とならなかった. 術式としては選択的頸部郭清術を基本としたが手術合併症は少なくPNDは安全に施行できることが明らかになった.
PNDのドセタキセル併用放射線療法への上乗せ効果を明らかにするためにはPND非施行群との比較も含めたさらなるコホート研究が必要である.