日本耳鼻咽喉科学会会報
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原著
耳下腺腺様嚢胞癌の診断法と治療法の検討
足立 真理岩井 大八木 正夫南野 雅之大前 麻理子李 進隆山下 敏夫
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2007 年 110 巻 5 号 p. 410-415

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抄録

当科における耳下腺腺様嚢胞癌12例につき検討した.
まず診断について, 局所痛発生率 (33.3%) が他の耳下腺悪性腫瘍より高いと考えた. 穿刺吸引細胞診での正診率は高くなかったが, 術中迅速病理組織診は有効であった.
治療については, T3, T4症例に対し耳下腺全摘出術, さらに拡大耳下腺全摘出術が行われた. しかし, 術中迅速病理組織診にて切除断端陽性と判明し追加切除され, 腫瘍を一塊切除できなかった症例が多かった. 一方, 5年, 10年の各死因特異的生存率は90.0%と80.8%であり, これまでの報告より良好であった. 当科では積極的に術後放射線照射を行っており, この照射が有効であると考えた. 今回の12例はいずれもN0であり, 頸部郭清術施行症例ではすべてpN0であった. また, 予防的頸部郭清術施行いかんに関わらず頸部再発は認められなかった. したがって, 予防的郭清術の意義は少ないと考えた.
予後について, これまで腫瘍の大きさ, 手術切断端の腫瘍浸潤, 神経浸潤が予後を悪化させる因子であると報告されている. 今回の検討ではこのうち神経浸潤, 特に術前顔面神経麻痺 (T4a) が強い予後因子と考えた. したがって, こうした症例ではより厳重な切除範囲決定と集学的治療の改善が必要であると考えた.

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© 2007 一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
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