2007 年 110 巻 1 号 p. 20-23
甲状腺癌の頸部リンパ節転移との鑑別が術前には困難であった, 頸部結核性リンパ節炎の1例を経験した. 症例は71歳女性である. 甲状腺右葉に約1cmの腫瘤と左葉に約0.5cmの小石灰化, 右頸部に多発リンパ節腫大を認めた. 甲状腺癌とその転移と考え, 甲状腺全摘術と右頸部郭清術を施行した. 術後の病理診断は, 甲状腺は濾胞癌と腺腫様甲状腺腫, リンパ節は結核性リンパ節炎であった. 癌患者でのリンパ節転移と結核性リンパ節炎の術前診断は困難であるとされている. 本邦では結核患者のうち70歳以上が占める割合が増加傾向にあり, 高齢の癌患者においてリンパ節腫大がある場合, 頻度は高くないが結核性リンパ節炎の合併もあることを念頭に置く必要がある.