日本耳鼻咽喉科学会会報
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ヘリカルCT3次元再構築を用いたアブミ骨定性診断の基礎的検討
川植 朗史九鬼 清典西村 道彦山中 昇
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2001 年 104 巻 8 号 p. 824-831

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抄録

はじめに: 選択的アブミ骨3次元再構築法によるアブミ骨病変の質的診断の可能性について基礎的検討を行った.
材料・方法: 骨充填剤セラタイトより削りだし作製した骨密度一定, 断面積を変化させたアブミ骨モデルと, QCT (Quantitative computed tomography) で使用されるアパセラムロッドから削りだし作製した, 断面積が等しく骨密度を変化させたアブミ骨モデルを, 頭蓋骨ファントム鼓室内に挿入固定した状態でCT撮影後, 3次元再構築を行い比較検討した. さらに頭蓋骨ファントムの上鼓室, 耳管周辺にワセリンを充填し, アブミ骨モデルを挿入固定の上, CT撮影, 3次元再構築を行いワセリン非充填の3次元再構築画像と比較検討した.
結果: すべてのアブミ骨モデルにおいて, しきい値下限を低下させることにより, 描出画像脚部断面の大きさが等比級数的に拡大することが判明した. また, 描出増大率は, 描出閾値では不安定だが, しきい値下限を低下させた場合, 安定化することが認められ, また骨密度が高いほど描出増大率が1に近似することが, 有意差を持って認められた.
考察: アブミ骨脚部のCT値はアブミ骨自身の骨密度によってのみ決定されるのではなく, アブミ骨脚部の大きさや中耳腔内の含気量や軟部組織の有無にも影響されるため, 絶対的なアブミ骨脚部の適正描出閾値を決定することは困難であると考えられた. 一方, アブミ骨脚部の描出増大率は, 骨密度は高いほど1に近似し, 骨密度が低いほど増大することが認められた. この描出増大率を3次元CTにより視覚的に表現することが, 質的診断に有用である可能性が示唆された.

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