2000 年 103 巻 6 号 p. 770-773
甲状腺の発生異常には,異所性甲状腺がある.その中に舌根部に見られる特異的な腫瘤に舌根部甲状腺がある.今回我々は,22歳女性の舌根部甲状腺を経験した.気道狭窄が出現したために手術を施行した.右外頸動静脈からの栄養血管を温存して摘出し,直径3cmの腫瘤を皮下に移植すると美容上問題があるため,右顎下腺を摘出した跡に有茎移植した.術後経過は順調であり,術後1ヵ月日の甲状腺機能は術前と変化なく,術後2ヵ月目の甲状腺シンチグラムにて移植部位で機能していることが確認できた.現在2年6ヵ月経過しているが,甲状腺ホルモンの投与量は全摘出した場合の1/4から1/8で済んでいる.
舌根部甲状腺の有茎移植を行い,機能低下を最小限に防ぎ,顎下腺摘出部に移植することより美容上満足する結果を得ることが出来た.