日本臨床外科学会雑誌
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症例
Tolvaptanによる腹水治療を行い切除した下大静脈腫瘍栓を伴う肝細胞癌の1例
高木 哲彦大場 範行京田 有介金本 秀行鈴木 誠高木 正和
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2019 年 80 巻 3 号 p. 551-557

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抄録

下大静脈腫瘍栓を伴う肝細胞癌(Vv3 HCC)の切除成績は不良であるが,切除が求められるoncological emergencyな病態である.今回,腹水を有する肝機能不良なVv3HCCに対して肝動注化学療法(HAIC)およびtolvaptanによる腹水治療を行い,腹水消失後に根治切除し,良好な予後を得た1例を報告する.

症例は56歳,男性.肝硬変の治療中にVv3HCCと診断され,肝動脈化学塞栓療法(TACE)を受けたが,治療効果に乏しく,当科紹介となった.切除予定であったが,術直前に腹水出現を認め,手術を中止しHAICおよびtolvaptanによる腹水治療を行った.1カ月後に腹水消失,新規病変や腫瘍栓伸展を認めず,切除可能と判断し,肝右葉切除,下大静脈腫瘍栓摘出術を施行した.術後肝・肺転移再発を認めたがHAICおよびTACE,放射線治療を施行し,2年6カ月経過現在,生存中である.

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© 2019 日本臨床外科学会
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