2018 年 79 巻 11 号 p. 2346-2349
症例は64歳の女性で,心窩部痛と嘔気を主訴に受診した.右季肋部に限局する軽度圧痛があり,CTで胆嚢腫大と胆嚢壁の浮腫状肥厚を認めて,急性胆嚢炎と診断した.胆嚢頸部に腫瘤影を認め,腫瘤の頸部嵌頓が胆嚢炎の原因と考えて,まずは抗菌薬による保存的治療を開始した.しかし,入院3日目に右季肋部痛と炎症所見が増悪したため緊急開腹術を施行した.胆嚢頸部に壁外から腫瘤を触知できず,胆嚢管を総胆管合流部近傍で切離して胆嚢を摘出した.切除標本では胆嚢頸部に径3cmの軟らかい有茎性腫瘍を認めた.肉眼的には腺腫あるいは早期癌が疑われ,追加切除やリンパ節郭清は行わなかった.病理組織検査で早期胆嚢癌と診断され,胆嚢剥離面や胆嚢管断端に癌の進展を認めなかった.胆嚢癌は自覚症状に乏しく,早期癌は胆石症の手術で偶然見つかることも多い.胆嚢頸部への嵌頓により生じた胆嚢炎を契機として発見された早期胆嚢癌はまれであり,報告をする.