日本臨床外科学会雑誌
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症例
膵頭十二指腸切除術後総肝・脾動脈仮性瘤への塞栓術による虚血性胃穿孔の1例
板本 孝太松崎 裕幸加賀谷 英生川崎 普司吉見 富洋児山 健
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2018 年 79 巻 11 号 p. 2258-2264

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抄録

症例は63歳,男性.膵頭部癌に対して亜全胃温存膵頭十二指腸切除,門脈合併切除再建術を行った.術後12日目に総肝動脈仮性瘤破裂をきたし,総肝動脈コイル塞栓術を施行,さらに術後17日目に脾動脈仮性瘤破裂をきたし,腹腔・脾動脈コイル塞栓術を行った.この際,肝動脈血流温存のため,アンスロン®P-Uカテーテル(ヘパリン使用体内植込用カテーテル)を用いた.
胃の虚血が懸念されたため,上部消化管内視鏡で粘膜の観察を行った.塞栓直後に前庭部大彎の粘膜が暗紫色に変化し,壊死・脱落した.その後一旦は色調が改善したが,塞栓後17日目に発熱があり,胃角部前壁と大彎後壁の穿孔を認めた.再手術も検討したが,保存加療を継続し,塞栓後36日目に穿孔は閉鎖,41日目に自宅退院となった.
胃は虚血に強いとされる臓器だが,総肝・脾動脈塞栓後の虚血性胃穿孔においても保存的に治癒した.その要因について,文献的考察を含め報告する.

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