2017 年 78 巻 12 号 p. 2673-2676
症例は62歳,男性.上腹部痛と発熱を主訴に受診し,腹部CT検査で空腸憩室および周囲の炎症所見を認め入院となった.入院後2日経過しても解熱せず,また検体検査でも炎症反応の増悪を認めたため再度CT検査を行った.空腸憩室周囲にfree airを認め,空腸憩室穿孔と診断して緊急手術を行った.開腹すると,Treitz靱帯より10cm肛門側の空腸憩室が壊死・穿孔していた.また,同部位よりわずか5cm肛門側にもう一つ憩室を認めたため,2箇所の憩室を含めた小腸部分切除を行った.摘出検体を確認すると憩室内に2cm大の腸石を認め,これが穿孔の原因であった.腸石の成分分析から98%がデオキシコール酸で形成された真性胆汁酸腸石であった.術後経過は良好であり術後12日目に自宅退院した.空腸憩室内の腸石が原因で穿孔をきたした,極めてまれな1例を経験したため文献的考察を加えて報告する.