日本臨床外科学会雑誌
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症例
食道バイパス術を施行した重症急性膵炎後に生じた食道閉塞の1例
中島 政信井原 啓佑百目木 泰加藤 正人窪田 敬一加藤 広行
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2016 年 77 巻 4 号 p. 961-966

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抄録

症例は62歳,男性.飲酒後の背部痛を主訴に当院を受診.重症急性膵炎の診断で内科的治療を行うも,約2週間後に膵性胸水が出現.入院後41日目に食道の狭窄および穿孔を確認した.内科的治療での治癒は困難と判断し,まず62日目に胆嚢摘出およびCチューブドレナージ,十二指腸切開膵管完全外瘻化,減圧胃瘻造設,空腸瘻造設術を施行した.その後,全身状態は安定したものの食道狭窄が増悪し,164日目に行った食道造影で完全閉塞を認めた.膵性胸水および食道穿孔による右胸腔内の癒着と食道周囲の線維化が予測されたため,食道切除は困難と判断し,184日目に右側結腸挙上による食道バイパス手術を施行した.経過は良好で,術後第13病日に経口摂取を開始した.その後は保存的治療を行い,術後第60病日に軽快退院した.これまでに急性膵炎後に生じた食道完全閉塞の報告は認められず,極めて稀な病態と思われる.若干の文献的考察を交えて報告する.

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© 2016 日本臨床外科学会
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