2016 年 77 巻 3 号 p. 552-558
食道癌に対する放射線治療後,6年以上経過して発生した食道(胃管)瘻形成を経験した.症例1は60代の男性.UtCe Stage IVaに対して根治放射線化学療法を施行しcomplete response (CR)を得た.瘢痕狭窄に対し拡張術を繰り返していたが,6年後,頸部背側に穿通した膿瘍が頸椎に波及したため,下肢の神経障害が出現した.咽頭喉頭頸部食道切除,胸壁前胃管挙上による胸部食道バイパス術を施行した.症例2は50代の男性.AeLt Stage 0の診断でendoscopic submucosal dissection (ESD)を施行.病理診断で粘膜下層に浸潤を認めたため,食道亜全摘,リンパ節郭清,後縦隔胃管再建を施行した.病理組織学的診断で多発リンパ節転移を認め,術後補助化学放射線療法を施行した.無再発生存中の術後7年目に胃管潰瘍に伴う胃管気管瘻を認め,胸壁前経路による食道空腸バイパス術を施行した.放射線治療後の食道(胃管)瘻に外科治療が奏効した2例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.